茨城支部代表ご挨拶

水戸地方気象台が発表した長期気象予測によると、今世紀末の茨城の平均気温は、宮崎市や八丈島と同程度になるそうです。最近では5月26日に、北海道佐呂間町で39.5度が観測されました。

この異常気象の主な原因は、二酸化炭素の増加による地球温暖化だと指摘されています。この解決方法には、原子力の再興が必要不可欠です。この課題に取り組んでいるのが(一社)原子力国民会議です。

私は、原子力国民会議とはご縁があり、2018年秋に開催された原子力立地地域全国大会で特別講演「明治魂が共に育てた原子力のまち」という演題で大洗町の歴史を述べさせていただきました。

そこで触れましたが、今から50年ほど前、200名を超える民間地権者の皆様の同意をいただき、延べ45万坪という広大な建設予定地に原子力研究所を誘致することが出来ました。その後、大洗町では経済、教育、福祉、文化スポーツ、社会基盤などに着実な進展がみられ、原子力研究者・技術者という貴重な人材も育ちました。これは、正に“人財”です。研究施設は、大洗町の重要な“財産”です。ここ10年間では100億円を超える税収等を得るなど、財政面においても、原子力立地による貢献は計り知れないものがありました。このように、町民憲章には“原子の火を育て・・”と謳われ、原子力と大洗町は共存共栄してきました。

また、東海村においても同様に原子力立地による恩恵を受けながら、原子力研究発祥の地として大きく発展し、世界に冠たる成果を挙げました。

以上のように、茨城県は、原子力研究発祥の地として発展してきましたが、福島第一原子力発電所の事故以降、県内の原子力研究所や原子力関連企業は、きわめて厳しい経営状況にあります。

福島第一原子力発電所の事故は、原子力開発利用の根底を揺るがしたことは明らかで、原子力を基盤エネルギーとするか否かは、現実的なエネルギー供給量、地球温暖化等の観点から本来議論をすべきだと考えます。この事故の反省を踏まえ、より安全な原子力システムの追及、放射性廃棄物の安全な処分など、原子力開発利用に伴う技術的課題への要求に応える必要があります。

一方で、原子力政策行政は、かつての原子力委員会により、政策と科学技術を一体化した計画や方針のもとで、科学技術庁が研究開発、通産省が電気事業をけん引する関係でしたが、現在では政策不在、行政推進の弱体化は明らかです。

そのひとつとして、原子力規制委員会による新しい規制への適合性審査が長期化している問題が挙げられます。審査に膨大な人材と時間を費やしていますが、日本原子力研究開発機構の試験研究炉である「常陽」や高温ガス炉「HTTR」の審査も、長期化しております。

長年にわたり、大洗研究所で成果を上げてきた材料試験炉「JMTR」は廃止措置に移行しますが、国内における照射炉のニーズは大きく、モリブデンを製造して医療用トレーサーとして利用することが、国内の医療機関から切望されています。モリブデンは半減期が短いため、経済性・確実性の観点から、国内で生産し、速やかに配送する必要があります。したがって速やかにJMTRの後継炉の計画に着手することが望まれます。

このような状況のなか、“いまこそ、発祥の地茨城から、原子力の再興を!”を旗印に、原子力国民会議のもとに茨城支部を設立し、地域住民の皆様と地域を活性化する活動を進めることを決意しました。

  “原子力研究のメッカ”であるこの地で育まれた優秀な“人財”と、重要な“財産”である多くの研究施設を活かした、地方創生の柱となる事業の誘致が急務です。

そこで、茨城県内の民間、国の原子力機構、大学の三者、いわゆる“産官学”の有識者が一体となって、日本の原子力研究を先導する役割を担う将来ビジョンを討論するため「原子力フォーラム茨城」を開催し、フォーラムでの提言を参考として、原子力国民会議茨城支部と本部の支援のもと、国に対する要請を行っていきたいと思います。

更に、県内に「サイエンスカフェ茨城」を結成し、地域住民との対話による理解促進活動を行い、日常生活に係わる身近な異常気象や電力事情や放射線などの話題をとりあげ、皆様と共に考える活動を行っていきます。

茨城支部の設立にあたり、原子力国民会議の活動と理念に賛同していただき、皆様のご支援、ご協力をお願いする次第です。

2019年6月2日
原子力国民会議茨城支部代表 田山 東湖